今日も地球の名物、酸素がおいしいです

プップクプーのプーです 地球には何十年か前に来ました

川に光る月の道を見つける 橋の上で、一人

それは20:00ごろ。

 

大きな川にかかる、それまた立派な橋を渡っていると、橋の左側にきらめく都会のLED電球たちに目が眩んで、そちら側へ行きたくなる。

 

光の世界に混ざると、私まで都会的な輝く人間になれそうで、でも行ったところで私は私という無力な個人でしかないことに気づくことも、わかっている。

 

 

あまりに長い人生を、自分の意志で、自分の責任で進んでいかないといけない重さを、ふと誰かのせいにしてしまいたくなる。

 

 

そんなヘドロのようにぬかるんだ心を振り払うために、外に出て涙をこらえながら、孤独に耐えられず光の方へと歩いた2時間前。

 

 

 

だれか、わたしはびょうきなんです。せかいにはこんなに人がいるのに、どうして誰もわたしとおはなししてくれないんですか。

 

 

 

 

 

橋の上で、暗い考えに支配された私が、明るい都会の電球の光に目を奪われたその時、前方から来た車のライトが眩しくて、ふと目をそらし橋の右側を見る。

 

そこには、日が落ちかけた暗闇が広がり、橋の上にいる私の目線よりもわずか上で、煌々とこちらを見ていた月があった。その月の下に、私に向かって一本に伸びる、まるで帯のような月の道があった。

 

 

もしかしたら、私がかぐや姫か、せめて美少女であったならば、その月が映る水面を沈まずに歩けたのかもしれない。

 

 

月の光が当たらない真っ黒な水面は鈍く渦巻き、黒光り。

月の道を歩けないなら、私は目の前に光る月の水面に身を投げずに、この真っ黒な地球の土を踏んで歩いていくしかない。

 

 

誰の太陽にも月にも、もちろん女神にもなれないまま、私は生きる。

 

 

都会の輝きを食べて、月の光もLEDの光も、みんなの優しさも痛みも髪の毛も、細い足も、あの大好きな人の笑顔も、全部私が、この私が、食べて、生きる!生きる。

 

何も失うことは怖くない、全部私が食べたから!もうそれはもはや私で、私の愛したものも憎んだものも私の罪も恥も夢も私の終わりまで絶対に消えないものだから。