のどから手が出るほど欲しいもの
私は天才になりたかった。
私はどうしてこんなにグズで、ガタイがよくて、空気が読めなくて、数学ができなくて、指が太いんだろうって、悩んだ。
全部自分の心の中に閉じこもって、閉じこもっていることに気づいてるのに、出ることができずにもがいて、たくさん薬を飲んだけどあんまり効かなかった。
美しい顔、作文のセンス、綺麗な髪、華奢な字、白い肌、化学の偏差値、細い足、みんなからの賞賛、センター試験の点数。
私は天才になりたかった。
みんなに綺麗って言われたかったし、誰よりも白くなりたくて、ガリガリに痩せたくて、それで、そして、そう、勉強ができるようになりたかった。
すべてを手に入れることができる人間は絶対にいなくて、自分で妥協していくしかない。そのことに気づいてたけど、全部諦められなくて、私は自滅していった。
coccoが言った。
欲しかったものは何も手に入れることができなかったと言った。
そのとき、私は正直にイラっとした。
coccoが苦しんでるのは知ってる、でもそれだけみんなに好かれて、細くて、ときにははっとするほど美しくて、天才だと崇められて、CDをミリオン売って、何を言うのだと。
結局、自分の基準でしかない。
苦しんで生きるも、笑って生きるも一生、じゃあ楽しめと?私に?
その言葉に感化されてすぐ楽しめるほど私は治っていないし、たぶんほとんどすべてを手に入れても、このままの私では一番欲しいものが手に入らないよ。
私が欲しかったのは、今の自分でばっちぐーなのだと、わたくしめはオンリーワンでナンバーワンで世界でひとつだけしか咲かなくて、みんなちがってみんないいのだと、私が世界でいっちばん綺麗で賢いのだと、強く信じる気持ちだったんだろうよ
わたしはけっこう綺麗だよ
そう思いたい
変な顔だけど
わたしはオンリーワンで賢いよ
そうだといいな
世界中の誰よりもそう思いたい
世界中の誰よりも賢くなりたいって
もう思いたくないな